2016年01月17日

菅野マナミ『良い子さんと不良先生』

〈2016年漫画感想3冊目〉
菅野マナミ『良い子さんと不良先生』


 『ひまわりさん』の菅野マナミによる自薦短篇集。珠玉という言葉が相応しい素敵な作品になっています。『ひまわりさん』の登場人物の原型にも思える者もいて頬が綻ぶのを感じるのも嬉しい。作品全体に流れる優しい雰囲気に心捕らわれてなりません。また,猫や狐といった動物が登場する作品が多いのも特徴と言えるでしょう。割と古めの作品も含まれていますが,絵柄が安定しているのが素晴らしい。作者による自作解説も楽しめます。とにかく女の子が可愛らしくて魅力的なのが秀逸。このあたりは『ひまわりさん』に踏襲されています。特にしっかり者とうっかり者の組み合わせを描かせたら絶品な気がします。個人的には眼鏡娘率の高さも嬉しかった。他愛のない日常を描いた作品も不思議な非日常を描いた作品も変わらず愛おしく思えます。微百合な描写も含めて女の子同士の関係を描いたら現在最も好きな作家のひとりであることは間違いありません。実に至福の時を堪能いたしました。

 収録されている短篇は全部で10篇。登場人物が共通するものはありません。長いもので20頁強,一番短いものは2頁と短篇よりも掌篇というほうが相応しい作品も含まれています。一番好きなのはやはり表題作の「良い子さんと不良先生」に尽きます。不良先生こと美術の山口先生がとにかく魅力的に過ぎます。白衣に眼鏡で咥え煙草が似合っているのも大変に好み。良い子さんこと良子さんを愛でる姿が愛おしい。このふたりの更なる物語も読んでみたいものであります。「彼女のひみつ」も素敵。物語との結末は割合に想像し易いものですが,それが陳腐になっていないのが素晴らしい。此方もその後が気になります。「良い子さんと不良先生」も「彼女のひみつ」の出逢いが描かれるので,猶更その後が知りたくなってしまうのは仕方がありません。印象的だったのは「まぼろし」。これも出逢いだけが描かれる作品となります。連作にして欲しいというのは,短篇としては成功しているという証左なのでありましょう。「まぼろし」はとにかく天然お姉さんの魅力が素晴らし過ぎます。菅野マナミの描く年の差があるふたりは同性異性に関わらず,本当に楽しい。「夏」と「狐の電車」は小学生が主人公。「夏」の目を前髪で隠した女の子がお気に入り。着物姿がたまらなく可愛いです。「視線」は2頁の掌篇。憧れの先生に恋する女の子が実に素敵。この器用な不器用さは『ひまわりさん』に通じるものを感じます。

 大変素敵な物語ばかりでありました。普段は短篇集というものには興味を抱かないのですが,この作品で認識を改めました。物語が短い分,小気味よくまとまった作品に仕上がっていて,長篇よりも自分好みかもしれません。続きが読みたいというもどかしい気分にもさせられるのもまた幸せでありましょう。とにかくどの物語も実に魅力に満ちており印象的でありました。作者による解説と合わせて読むことで更に楽しさが増すのも二重丸。甘酸っぱさに満ちた青春に憧憬を覚える珠玉の短篇集でありました。
タグ:菅野マナミ
posted by 森山樹 at 21:35| Comment(0) | TrackBack(0) | 漫画感想
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