2016年02月03日

椎名高志『絶対可憐チルドレン(44)』

〈2016年漫画感想5冊目〉
椎名高志『絶対可憐チルドレン(44)』


 第4のチルドレンこと雲居悠里の帰還が為された『絶対可憐チルドレン』の第44巻です。黒い幽霊との戦いを交えてはいるのだけれども,物語が明確に動いている雰囲気がないのがもどかしい。まあ,松風が完全に主役のひとりとして定着したのは嬉しいところです。皆本よりも兵部との絡みが目立つような気もしますけれども。ザ・チルドレンの3人も薫が中心で,残るふたりは脇役に感じられるようになったのは少し寂しい。高校生篇に入ってからは薫を巡る物語という色合いが濃くなってきたような気がします。となると,中心になるのは皆本,兵部,松風に悠理あたりに比重がかかるのは仕方がないところでありましょうか。登場人物が多い作品なので,脇役陣の活躍のほうが楽しみな部分は大きいのですけれども。マッスル大鎌あたりの再登場も待ち望んでいます。澪やカズラ,パティの出番が多いのは救いであります。彼女たちが中心となる物語も今後用意されていると嬉しい。ナオミも中学生篇あたりから目に見えて出番が減ったのは寂しいです。或る程度は仕方のない部分はあるのですけれども。

 収録されているのは「ステイ・ウィズ・ミー」の後半部分と,「新たな戦い」,それに「デート・オア・ダイ」の前半部分。ザ・ハウンドの成長ぶりは頼もしかった。小鹿主任が一番頼りなく思えるのは気の所為か。それでも,その超人的な体力が明かされたのは面白かったです。そして,その裏で進行していた賢木とバレット,ティムによる松風の身辺調査は素直に好み。賢木の悪いけれど頼りになるお兄さんとしての立ち位置が素敵です。それだけに不穏な描写が多いのは気がかり。「新たな戦い」は悠理の帰還戦。彼女との再会を素直に喜ぶちさとやカズラたちの姿に頬が綻びます。生徒会副会長の金城さんの出番があったのも嬉しい限り。ハンゾーやナイの再来日も期待したいところであります。悠理の薫大好きぶりが最早異常な域にまで達しているのは気の所為か。「デート・オア・ダイ」はその悠理の暴走ぶりが楽しい。ちさとによる東野,カズラによるカガリの馴致が酷かったです。そして,こういう時に妙に頼りになるパティが素晴らしい。過去を回想するパティの横顔が美しかったです。辛い過去は過去として,今を生きるパティやバレット,ティムらの姿は悠理にとっても救いとなる筈。その意味では想像以上に重要な存在となりつつあります。

 黒い幽霊を統べるギリアムの内通者の存在が明かされたのが不穏な巻でありました。勿論,それは無意識のうちということになるのでしょうけれども。一番有力なのは賢木ということになりますが,そうは安直にはいかない気がするのも事実。松風に対する疑惑が完全に払拭されたわけでもありません。少しずつではありますが,物語は動いてはいるのかなあ。高校生篇に入ってから歩みが遅くなっているように思えるのが気になるところです。次巻もとりあえずは悠理の暴走から入るのが確定しているわけですしね。まあ,パティの出番が多いのは歓迎すべきではあります。

(小学館 2016年)

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posted by 森山樹 at 21:11| Comment(0) | TrackBack(0) | 漫画感想