2015年11月07日

空知英秋『銀魂(61)』

〈2015年漫画感想32冊目〉
空知英秋『銀魂(61)』


 将軍暗殺篇から続く路線が継承される『銀魂』の第61巻です。表紙を飾る真選組の三人からも分かるように,真選組が中心の巻となっていますが,天照院奈落を統べる虚の正体が吉田松陽と判明するなど相変わらずの激闘が続きます。更には見廻組の佐々木異三郎と今井信女を巡る物語にも決着がつくなど内容は盛り沢山。その分,諧謔性はほぼ皆無であり,その類の趣向を『銀魂』に求めると辛いかもしれません。物語の性質上仕方がないのですが,柳生九兵衛や月詠らの出番も将軍暗殺篇に引き続き全くなし。その分,真選組や桂小太郎,松平片栗虎,見廻組の活躍が十分に堪能出来るわけですけれども。とは言え,本来の目的であった近藤勲と松平片栗虎を奪還することには成功したものの,失ってしまったものもあまりに大きかった。また,事実上の反逆者となってしまったことで真選組そのものも追われる身となり,江戸から離れることを余儀なくされてしまいます。或る意味で真選組の終焉が描かれる巻であり,また真選組の新たな旅立ちが描かれる巻とも言えるでしょう。

 読みどころは多いのですが,個人的にはやはり佐々木異三郎の退場が一番大きかった。最後の最後まで自分の真の目的を明確には明かさず,その目的を完璧に達成する彼はまさに傑物というべきでありましょう。今井信女との愛執が入り混じった関係も良かった。以前に彼が真選組のファンだと述べたことは結果的には真実でありました。天導衆から信女と鉄之助を護って散った彼の最期は夜明けを見ることなく暗闇に消えるというもの。明確な死が描かれていないので再登場の期待も残されていますが,どうなることか。個人的にはその生に見合った死にも思えるのではありますけれども。勿論,再登場するならば,それはそれで嬉しいです。そして,無事に近藤勲を奪還した後に江戸を去る真選組と万事屋それぞれの別れも大変良かった。土方と銀時の酒場での語らいも沖田と神楽の果し合いも素敵だったのですが,一番は近藤とお妙でありましょう。悪質ストーカーと罵倒され続けながらも愚直に一途にお妙を追い続けた近藤の想いが伝わったと信じたいところ。尤も,ふたりの関係の変化は以前から少しずつ描かれてはいたのですけれどね。このシリーズでは近藤の株が一気に上がった気がします。以前から格好良いところは格好良く決める好漢であったことに変わりはないのですけれども。だからこそ,佐々木異三郎ともっと語らう姿が見たかったです。佐々木異三郎と因縁のあった銀時や土方との関わりが薄かったのは仕方がないのかな。最後に全員で敬礼する場面は泣けました。それを陰から見る銀時たちの姿も。

 真選組は江戸から去ることで物語からは一端退場。幕府に,というよりも天導衆に対抗する力を携えて戻ってくる日を楽しみにします。そして,明らかになった真の黒幕こと虚との戦いが今後の焦点となってくるのでありましょう。吉田松陽との関係が気になるところではありますが,いずれにせよ銀時,桂,高杉らとの因縁が中心となることかと思います。そして,その鍵を握っているのは,かつて天導衆に属し,且つ吉田松陽の弟子も言える今井信女ということになるのかな。全く先の展開が予想出来なくなってきた『銀魂』の行く末が楽しみであります。個人的にはもう少し諧謔性が欲しいけれど,この展開が続く限りはちょっと厳しいなあ。
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posted by 森山樹 at 08:08| Comment(0) | TrackBack(0) | 漫画感想