2015年11月03日

高尾じんぐ『くーねるまるた(8)』

〈2015年漫画感想31冊目〉
高尾じんぐ『くーねるまるた(8)』


 ポルトガルから来た食いしん坊娘のマルタの日常生活が描かれる『くーねるまるた』の第8巻。今巻では初めてとなる旅行篇が収録されています。その目的地は盛岡。日本文学に明るいマルタにとって盛岡は石川啄木や宮沢賢治の縁の地ということで魅力的な場所だったのではないでしょうか。どんな場所にいっても明るく元気で楽しいマルタの姿が羨ましいです。また,個人的にはマルタを思い遣る神永さんの物語が描かれたのが嬉しかった。酒乱気味で面倒くさい部分もあるけれども,やっぱりマルタにとっては日本での姉的な存在なのだなあと実感します。美緒子や由利絵とはまた違った立ち位置にある女性ですね。今巻では医師としての姿を垣間見ることが出来たのも良かった。いつかは目指す美術への道が叶って欲しいものであります。彼女を含めたマルタの周囲の人間たちが相変わらず魅力的でありました。こんな楽しい生活を送ってみたいと思わざるを得ません。その為にはマルタの如く前向きで明るい笑顔を絶やしてはならないのでしょうけれども。その時点で無理だなあと溜息を吐いてしまいます。

 今巻は前半部分が盛岡旅行,後半部分がいつも通りの日常となっています。盛岡は自分も未体験の場所なので何もかもが目新しく楽しそうでした。じゃじゃ麺とジャージャー麺が違う食べ物というのも初めて知りました。ちいたんたんという食べ方も心惹かれます。そして何よりもマルタが泊まった熊ケ井旅館の家庭的な雰囲気が実に素晴らしい。尤も,自分は馴染むことが出来ないかもしれませんけれども。今巻では旅行前夜と後日談が描き下ろしとして収録されているのも嬉しいです。旅行絡みで一番好きなお話は神永さんの思いやりが胸に迫る「帰京」ですけれどね。改めて,神永さんに惚れ直しました。後半の日常生活はいつも通りに楽しくて美味しそうな食べ物が満載です。「ゴーヤ」で描かれたポルトガルの冷製スープのガスパショが特に美味しそう。酸味と苦みが夏の暑さには最適に思えます。尤も,生のトマトを使用している時点で自分には食べられないのですけれども。「夏の自由研究」で微かに触れられた『鉄腕アトム』好きのマルタの妹の登場にも期待をしたいもの。お姉さんのエリザも魅力的だっただけに,いつか来日してくれることを楽しみにしています。姉としてのマルタの姿も見たいですね。「洞窟」でマルタが作ったポルトガルのサンドイッチ,ビファーナも美味しそうでした。ポルトガル料理を食べに行きたくなってしまいます。

 相変わらずの楽しい日常が素直に羨ましい。自分にとっての理想化された生活が此処にあります。初めての試みであった盛岡への旅行も素直に楽しかった。こういった形で旅行先の人々との触れ合いをもっと観たいなあと思います。勿論,その地独特の珍しく美味しい食べ物との出逢いも是非描いて欲しいもの。勿論,マルタの日常生活自体も本当に楽しめているのですけれどね。少しの工夫で美味しいものは幾らでも作られるということを実感します。今巻で一番食べたかったのはジンジャー鯖寿司かなあ。相変わらず,マルタに理想のお嫁さん像を観た巻でありました。次巻の刊行も心待ちにしています。
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posted by 森山樹 at 08:10| Comment(0) | TrackBack(0) | 漫画感想