2015年10月26日

久織ちまき『聖闘士星矢セインティア翔(6)』

〈2015年漫画感想29冊目〉
久織ちまき『聖闘士星矢セインティア翔(6)』


 女神アテナを護る為に戦う聖闘少女たちの過酷な戦いを描く『聖闘士星矢セインティア翔』の第6巻です。舞台としては原作での黄金十二宮篇が終わった直後。このあたりの原作と同時に物語が進むことで様々な絡みが堪能出来るのは本作ならではの楽しみ方と言えるでしょう。特に十二宮の戦いの後に生き残った黄金聖闘士たちの新たな戦いを楽しめるのは素直に嬉しい。また,蛇遣い座のシャイナや一角獣座の邪武など原作ではやや活躍の場に恵まれなかった聖闘士にもきちんと見せ場が用意されています。勿論,本作における主人公である聖闘少女たちも新たな敵との苛烈な戦いの中で成長していく姿が描かれます。特に冠座のカティアの再登場は嬉しかった。心ならずも女神アテナを裏切った過去を贖罪する為に戦うカティアが死に急いでいるように思えるのは気のせいかなあ。聖闘少女の中では一番の実力者であり,その美貌も際立っているだけに何とか生を全うして欲しいものであります。彼女自身はそれを望んではいないようにも思えるのですけれども。

 新たなる敵は復活した争いの女神エリス。但し,今回のエリスは翔子を護りたいという響子の想いを歪曲した形で取り込み一体化した姿となっています。即ち,響子はエリスの憑代ではなく,響子とエリスが融合して新たな神格になったというほうが正確なのでありましょう。全ての戦いを愛し肯定する争いの女神としてエリスはアテナとほぼ同格の立場になりました。そして,エリスと融合した響子の許にはオリオン座のリゲルの姿もあります。彼の立ち位置も気になるところ。響子ならばともかく,少なくともエリスには全幅の忠誠を捧げていないように思えます。蠍座のミロとの因縁が如何に描かれるのかも楽しみです。一方でエリスと共に彼女に従う悪意の邪霊士エモニも復活を果たしました。以前よりも成長した姿でイルカ座の美衣を苦しめますが,その悪辣な戦い方は相変わらず非道で素敵。精神攻撃により肉体に損傷を与える彼女の特性はまさに悪意に相応しいものでありましょう。しかし,冠座のカティアによる救援があったとはいえ,最終的にエモニを滅ぼす美衣に聖闘少女としての成長を感じました。アテナというよりも沙織に対する盲目的な忠誠心はやや危うくもあるのですけれども。エモニが消滅の間際に見せた過去も気になりますが,語られる術は最早ないかなあ。そして,獅子座のアイオリアは蘇った双子座のサガの悪の人格と対峙中。原作では見られなかった対決だけにその行く末が大変楽しみであります。なお,アルデバランやシャカにも見せ場は用意されていますが,黄金聖闘士の出番が多いと聖闘少女たちが霞んでしまうのは難点ですね。活躍するのは嬉しいのですが,適度のところで程程にして欲しいものであります。

 原作の裏面で展開されていた戦いという設定が素直に楽しい。序盤は劇場版『聖闘士星矢 邪神エリス』の設定を再構築していたのに対し,争いの女神エリスの二度目の復活以降は独自性のある物語に移行しているのが興味深いです。とは言え,やはり黄金聖闘士が目立ち始めている分,聖闘少女たちの影が薄くなっているのは否めないところ。カティアと美衣はともかく,小熊座のシャオリンに至ってはまるで出番がありませんでしたし,翔子も結局は響子と対峙をしただけで終わってしまいました。争いの女神エリスとの戦いはやはり聖闘少女たちによるものであって欲しいです。悪の人格のサガやオリオン座のリゲルは黄金聖闘士に任せざるを得ないでしょうけれども。いずれにせよ,〈聖闘士星矢〉好きとしては期待の作品であります。更なる戦いの帰結に注目しています。
posted by 森山樹 at 23:16| Comment(0) | TrackBack(0) | 漫画感想