2015年09月04日

春河35『文豪ストレイドッグス(8)』

〈2015年漫画感想17冊目〉
春河35『文豪ストレイドッグス(8)』


 文豪異能戦闘漫画『文豪ストレイドッグス』の第8巻です。組合との戦いが激化する中で武装探偵社とポートマフィアの二大巨頭が共闘を協議するという展開が楽しい。尤も,その協議は表面上は直ぐに決裂してしまうわけですけれども。しかし,詛いの異能者“Q”こと夢野久作を奪還に動く武装探偵社の太宰治の元にポートマフィアの首領である森鴎外から中原中也が派遣されます。組合のスタインベックとラヴクラフトと対峙する太宰治&中原中也の「双黒」の共闘は燃えるものがありました。江戸川乱歩とエドガー・アラン・ポオの推理対決も楽しい。また,組合の空中要塞白鯨に潜入した中島敦は宿敵である芥川龍之介と再会を果たすことになります。曲がりなりにも消極的な共闘状況にある武装探偵社とポートマフィアだけに此方も一旦は共に戦うという道を選ぶことになるのでしょうか。外連味しかない展開が非常に好みであります。

 漸く明らかになった中原中也の異能「汚れつちまつた悲しみに」の正体は重力操作。『汚濁』と呼ばれる最終形態に至っては暗黒空間さえも駆使することが出来ます。但し,本人の制御も不可能となる為に異能無効化能力を持つ太宰治の補佐は欠かせません。その太宰治に完全に玩具にされている中原中也が良かったです。国木田独歩や芥川龍之介とはまた別の意味で太宰治と似つかわしい組み合わせと言えるでしょう。或る意味では被害者とも言えますが。また,ラヴクラフトの「旧支配者」は太宰治の言によれば,異能ではなく別のものということも判明しました。但し,江戸川乱歩の「超推理」とは異なり,明らかに人外の力であるが故に謎は深まります。その江戸川乱歩はエドガー・アラン・ポオの異能「モルグ街の黒猫」により小説世界の中に閉じ込められてしまいますが,与謝野晶子の提言を受け入れて,無事に脱出に成功しました。この際の与謝野晶子が非常に魅力的でありました。武装探偵社の福沢諭吉とポートマフィアの森鴎外の対峙も緊張感があって楽しい。また,白鯨の中で待ち受ける組合団長フィッツジェラルドの存在も胡乱であります。彼の異能「華麗なるフィッツジェラルド」もその詳細は未だに不明のままですからね。

 幾つもの対峙が読み応えのある巻でありました。本来の主人公である中島敦の出番はやや少なめでしたが,白鯨の中での芥川龍之介との戦いから始まる筈の次巻での活躍に期待したいものです。その白鯨を操るハーマン・メルヴィルの渋さも格好いい。組合で残る主力はフィッツジェラルドを除けば,マーク・トウェインくらいかな。流石にルイ・オルコットが直接戦闘に携わることはないと思えますので。気になるのはラヴクラフトが完全に滅んだのかということと夢野久作の扱いでありましょう。いずれにせよ,組合との戦いも佳境に差し掛かっている気がします。この戦いの帰結が如何なるものか楽しみ。その先の武装探偵社とポートマフィアの関係も含めて目が離せません。
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posted by 森山樹 at 06:46| Comment(0) | TrackBack(0) | 漫画感想